トラウト ミノーのカラーについての2回目をはじめます。
第2回「ナチュラルカラー。アユにヤマメにワカサギのバリエーション。」をお伝えします。
さて、第1回では光の量による色彩とアピールについて書きましたが、東北ザウルスの粕谷氏と話していて、大事なことを書き忘れていたことに気がついたので一つ書き足します。
トラウトは色彩が判別できるのか?との疑問。
答えはYES!です。
学術的に専門書が沢山出ていますので興味のある方は文献を探してみてください。
結論から言うとトラウトはかなり色彩判別の能力に優れており第1回に書いたカラーリングもしっかり判断しているということです。
さて、補足はこのくらいにして第2回の本題に入ります。
トラウトミノーの代表的なカラーにはアピール系のカラーとナチュラル系のルアーがあります。
例えば赤や、ピンク、などはトラウトフィールドにこんな色の魚はいないわけだから(金魚が逃げていれば別だけど。笑い。)、釣れる理由はアピール。
第1回でも書きましたが、ブルーやグリーンは水系や水質でベイトフィッシュがこれらの背色をまとうことが多々あるのでナチュラル。と乱暴だけどざっくりと分けて話をします。
さて、そのナチュラルカラー。
もっと絞ってゆくと、完全にベイトフィッシュに合わせる事になる。その代表がアユ、ヤマメ、ワカサギなどのカラー。
先ずはアユ。日本の代表的な渓流魚で流れを好み、本流のビッグトラウトの最高のベイトフィッシュになっている。
トラウト族は完全に肉食で小さいうちは昆虫などを捕食することが多いが大きくなると効率の良い小魚を食べるフィッシュイーターになる固体が多い。
したがってこのアユが、本流、渓流での絶対的な実績カラーとなる。当たり前の事から書き始めたけれど、もう少し掘り下げます。
アユといってもその一生を終える1年間で劇的にその姿を変える。
先ずは稚アユ。遡上した天然のアユも放流された稚アユも川に姿を現すときは「アユ団子」と言われる、群れになっている。
そうした稚アユはシルバーの輝きが強く、ややグリーンがかった背中をしている。エラの後ろの黄色点(以下 追星と呼ぶ)追星はほとんどない。
ここで追星について、整理します。
アユの追星は、はっきり言って威嚇の色です。
アユは縄張りをもち、他のアユが縄張りに進入すると体当たりをして追い払います。また、強いアユが弱いアユを追い払い新しい縄張りを得る場合もあります。
だから、水中で最も目立つ色 黄色をあえてまとっているのです。
したがって、アユ団子で群れている稚アユは威嚇する必要がないから追星がまだない。敵に襲われにくいように群れているのだから敵から見つかりやすい黄色の追星はまだ身に付けないのだ。
縄張りを持ち出したアユは当然、より新鮮な水苔(あゆは石についた水苔を食べています。)が沢山再生する場所、すなわち流れの速い瀬の中で苔のつきやすい大きな石がある場所が最高で、奪い合いが始まります。そしてそうした場所により強いアユが縄張りを持てるということになるわけです。
追星は強いアユほど濃い黄色を示し、さらに強いアユは左右に2個ずつ1対計4個の追星をまといます。
ガンガン瀬の大石。最高の場所にはマッキッキの濃い追星が左右2こずつ4個くっきりとアピールしている最強のアユが陣取っているのです。
第1回でも書いた、一番目立つ色黄色をあえて魚の弱点、鰓のすぐ後ろにあしらい、縄張りを強烈にアピールするわけです。
そしてこの黄色ははっきりとトラウトからも認識されます。
マッチ ザ ベイト。その時期のベイトフィッシュに合わせるならば、カラーも注意したい。
稚アユはシルバーが強く、追星がほとんどない。
放流直後の稚アユがベイトフィッシュならアユカラーを使うよりも追星のない「ワカサギカラー」がより稚アユに近く、僕はこの時期
ワカサギのいない本流や渓流でワカサギカラーで実績を上げている。
アユが少し成長すると瀬に入り縄張りを持つようになる。
そうなるといよいよ威嚇の追星が現れる。
サイズは9センチ強に成長。このワカアユは遠慮がちにうすいレモンイエローの追星をまとい始める。
したがって、この時期になったらうすいイエローの追星をまとった若アユカラーを選択したい。
そして、定番のアユカラー、背中の色が茶色っぽくなり追星も濃い黄色になってくる。市販のアユカラーはこのあたりのカラーリングが多い。時期的にも6月のトラウトベストシーズンにはアユの色が多くなっているから、最大公約数でこのパターンが有効と言うこと。
さらに夏が深まるとアユはボディーのカラーをシルバー系から色が濃くなり、どちらかと言うとうすい金系の色になる。
当然、「金アユ」というパターンが欲しくなる。
最近のブラウニートランの金黒に採用されたようなうすい金に山吹色のような強く濃くマットなイエローの追星が欲しい。
私は自作して金アユをバリエーションに加えている。

(自作の金アユ カラー。写真は黒っぽく見えるけど、濃いブラウンバックにうすい金のボディー)
秋の風が混じり始めると、いよいよアユのお腹には卵が抱かれ、サビアユのカラーをまとう。
ついには背中はやや紫を帯びたカラーになり、色は濃く、からだの下半分はオレンジがかった婚姻色が出始める。
さらに秋が深まると完全に落ちアユになり、色は黒紫っぽく、赤婚姻色が強くなるが(ほとんど産卵期のウグイのような色)この時期はトラウトのオフシーズンとなるのでトラウトカラーからは除外する。当然、落ちアユシーズンのリバーシーバスなどには必要なカラーとなるが、今回はトラウトのカラーリングなのではずす。
さて、落ちアユではなく、サビアユ。
そのパターンとして私が大好きなのが、過去スポーツザウルス時代にTY−REXに塗られていた「ムーンストーン」と言うカラー。
これがまさに「サビアユカラー」に近い。
このムーンストーンに濃い黄色の追星を2つづつ両鰓の後ろにペイントすれば、完璧なサビアユだ。

(ムーンストーンに追星2つ入れて、サビアユだ!)
このムーンストーンと言う色。とてもよく釣れる。
実は昔からあの東北ザウルスの西村氏も大好きで、ザウルスHP釣行記のコーナーで西村氏が北海道のアメマスの記事を書いているが、その中でアメマスがくわえているTY−レックスのカラーがこのムーンストーンだ。
さてこの、サビアユカラー。実は秋じゃなくても良く釣れる。
はっきり言ってフェバリットカラーの一つ。
ワカアユの時期にサビアユカラーも効くって?!
これが効くんです。
私はこれを「ナチュラル系+アピール」と位置づけています。
すこしタフった時や、カラーローテーションで、もろナチュラルなカラーにスレ気味のときに効きます。
最近、ザウルスにも登場したヤマメオレンジベリーや、ザウルスジュニア テストカラーのMD9cm 「ニジマス オレンジベリー」などもこの系統。
当然 「ナチュラル+アピール系」のアユ オレンジベリーも欲しいのだ。
さて最強のナチュラルカラー アユ。細分化してゆくとさらにその河川ごとの水や石の色に同化したアユのカラーや、成魚に近い状態で放流された、黄色っぽいアユなどきりがない。
しかし、状況を分析しながらカラーを組み立てるとこうした微調整も欲しくなる。
次にヤマメカラー。
ヤマメカラーと一言で言うが、鮭、トラウト族の稚魚の総称としてここではヤマメカラーと位置づける。
重要なのは背中の色。
イワナの稚魚ならば、茶色っぽく。
ヤマメでも河川によって微妙な背中の色の違いがるし同じ河川でも
居付き選ぶヤマメはやや茶色っぽい背中になってゆくし、湖や下流域あるいは海まで降りようとするヤマメ スモルト(サクラマスになるぞ!)は同じ河川でもグリーンぽい背中の色になる。
だからスモルトが下る時期にはすこしグリーンがかった背中のヤマメカラーが良いだろうし、鮭に稚魚になると少しブルーがかった背中の色になる。ザウルス REX MD7cmのカラーにヤマメのほかにオリーブスモルトやブルースモルトが加えられたのはこうした理由からだ。アマゴのいる河川では赤のマジックで赤い朱の点を入れてみよう。アピールでオレンジベリーも加えたい。
ヤマメカラーはフィッシュイーターの食べやすいサイズだから、効果的なマッチ ザ ベイトになるが、もう一つ釣れる理由がある。
それは縄張り争いの排除の効果だ。
初夏に瀬の中をのぞいてみると、瀬の流芯の先頭、一番餌が採りやすい位置に一番強いヤマメ、すなわち体の大きなヤマメが陣取っている。弱く小さなヤマメが先頭に入ろうとするとものすごい勢いで体当たりとかみつきを見せる。
そう、パーマーク(ヤマメの体側にある楕円の模様)は幼魚斑で同属の魚から、攻撃されないように私は子供ですとアピールするための模様なのだが、子供を喰おうとして襲う巨大魚や、同じ幼魚班を持つ仲間からも、縄張り争いや場所取りに関して攻撃の対象になるのである。
したがって、ヤマメカラーでヤマメが釣れたりするのである。
最後にワカサギ。
ワカサギは湖に住む魚だけれど(本来は汽水や海水息の魚だが淡水に放流したところ適応して大繁殖した、レイクでのトラウトフィッシングのベイトフィッシュだ。
ワカサギはワカサギ、バリエーションなんてあるの?!
ありますあります。
先ずは先ほど触れた、稚アユパターンでワカサギカラーを使うことが一つ。
もう一つは実際のレイクでのマッチ ザ ベイトでのバリエーション。
ワカサギはオスもメスも産卵の時期も色が変わらない!と思っていたら間違いですよ。
産卵の時期にやせた小ぶりのワカサギにスポットを当ててよく観察すると、ホホに細かい黒点が沢山有る!それって何よ?
ワカサギのメスは太って丸々していてサイズが9センチから13センチを超えるものもいる。じゃあ7〜9cmくらいの小ぶりなワカサギで痩せてほっぺに細かい黒点が沢山あるのってなによ?
そう、もうお気づきと思いますが オスのワカサギです。
メスのワカサギにはホホの黒点はありません。
そんな小さな黒点で関係ねーだろって!こじつけだろう!って?
確かにそうかもしれませんが、実際そうした模様があるのは事実。
そして、このように使います。
山上湖、狙いは大イワナや湖沼型サクラマス。ベイトフィッシュはワカサギ。いつもは9cmから11cmのワカサギカラーがベストだが今日はチェイスしてもなかなかバイトしない。
こうした状況で 7cmにサイズダウンしてバイトを誘う。
もちろん普通にワカサギカラーの7cmにしても良いのだけれど、
「今日は小ぶりのワカサギをセレクトしている!オス ワカサギにしよう!」とサイズと共にポケットの細書きマジックでほっぺたに黒点を10個くらい入れてやる。
釣果にこの黒点が爆発的に効くとまでは言いませんが、湖の回遊待ちはときには数時間バイトもなく投げ続けることも必要な釣りです。アングラーの集中力やルアーへの入魂が薄れないようアングラーの心に栄養を与えるためにも僕はこんなこともしています。
どんなカラーにも言えるのですが、「この色でいいのか?当たりカラーが見つからない。」と悩み始めて集中力が切れるとルアーのアクションにも影響して、ますますつれなくなるものです。
肝心なのは、絶対このカラーが効くんだという信念と集中力でしょう。時にはこじつけでも、納得しながらカラーをセレクトするようにすると、釣れない時でも心が折れません。
最後にナチュラルカラーとしてのチャート。
これもこじつけかよって!
チャートカラーのニジマス。養魚場や釣堀で見かけたことありません?そう、アルビノです。産まれ付き色素がかけた突然変異個体です。どこかの動物園で白い虎が生まれたとか、アルビノのニシキヘビがペットショップで高値で取引されたと、どんな動物にもアルビノは存在する。ジャマイカ人でレゲェのDJ「イエローマン」というミュージシャンはいわゆる人間のアルビノだ(語弊がないように補足しますが、僕は差別主義者ではありません。イエローマンを尊敬しています。)もちろん自然界でもアルビノは存在するのだけれども、自然界ではほとんど見られない。なぜか!?それは目立つために成長する前に敵に襲われ大人に成長することはまれであるからだ。
確率的には自然界で、ウグイも、アユも、ヤマメもベイトフィッシュはすべてアルビノが発生するはずだ。
目立つために真っ先に喰われる!と言うことはナチュラルな意味でもチャートは効果的と言うことだ。(出来れば赤い目にしてみようか!)
最後にベイトフィッシュについてもう一つ。
アユに、ワカサギに、ヤマメにって。実績が上がっているカラーはあるけれど、実際川の中には鯉やウグイや他の魚もいっぱいいるのに、何故差が出るのって?!
実際アユが川に現れるとフィッシュイーターたちはウグイやオイカワやフナやましてや鯉の稚魚には見向きもしない。
膨れた胃袋の中はアユのみでいっぱいだ。これはアユ団子で喰いやすいと言うだけではない。アユが瀬に入ってゆくと、それについてビッグトラウトも後追いして瀬の中でアユを追いまわす。
なぜか?!それはアユが旨いからだ!
独断だが自分なりの結論がある。
「フィッシュイーターが喰って旨いと思うベイトフィシュは、人間が食って旨い魚だ!!」アユも、ワカサギも、ヤマメもそうだ!
ウソつくなって!
いえいえ、ちゃんと理由があります。それらの魚の共通は味が良いことと共に、骨が柔らかい。アユも、ワカサギも、ヤマメも(あまり大きな固体は別だけど)塩焼きにすると皆、頭までたべられるほど骨が柔らかい。
鯉などは骨が硬くて小さな稚魚でも丸ごとはとても食べられない。
そうです。ビッグトラウトにとっても骨の硬い魚はベイトフィッシュとして嫌われる!!理由は喰いにくいからです。
だから、最高のベイトフィッシュは アユ、ヤマメ、ワカサギと言うわけです。
こんな事を聞いたからといって、同じアユカラーを使う中で釣果がさらに上がるとまでは言いませんが、こんな小話も思いつつ、キャスティングを繰り返す中、釣れない時にも集中力と楽しみが増すというものです。
ここまで来ると「変態的」と言われるナチュラルカラーの話。
お付き合い有難うございました。
「そんなこたー 聞いちゃーいねーよ!」と思われる方は、笑い飛ばしてやってください。
さて次回は!
トラウト!どんなカラーが釣れるの? その3
第3回は「トラウトカラーにおける、魚種とカラーの関係。リアクションバイト、捕食のカラー。」をお伝えします。
お楽しみに!