
2.5日?とすぐ疑問に思うでしょう。実は、環境庁の役人に釣りを止められてしまったのです。前の釣り人は最終日がキャンセル、我々は2.5日でキャンセル、隣のロッジに来る予定の次のグループはハバロフスクでキャンセルになり他の川に向かったらしい。理由は、本年度、海洋水産資源調査を実施したところ極端にシーマの数が少ないとの理由で、急遽、コッピ川の河口から上流40キロにある橋まで禁漁にするとのことであった。これは外国人の我々だけだなく、現地の漁師たちにも当てはまる。我々のフィッシングはストップとなり、漁師の網もボートのエンジンも取り上げられている。何ということだ。イライラと焦りが募る我ら一行であるが、ロシアという国の体制の問題であるから、どうにもならない。
5日の予定が2.5日のフィッシングになったことは残念であったが、個人的には大変意味のある旅であった。いつかのコッピ川は雑になるくらい釣れた。それはそれで、色々なことを試して経験値を高めることができたが、今回のように1匹1匹を丁寧に狙い、作戦を絞り込んで得た25本のシーマとの出会いは難易度の高いスキルトレーニングとなり内容的に納得している。
同行のフライマンは苦戦して、2人とも2〜3本の釣果、ルアーマンも少ない人は1本のみに終わっている。それだけに1本1本の価値が高い。やはり釣りは数ではなく、プロセスと1匹1匹との出会いが大切であるということ、自然の偉大さと人間ではどうにもならない壮大さを改めて痛感した旅であった。
ところで、気になるところの今後のコッピ川であるが、ロシアの旅行社組合が今回のツアーの苦情と異議申し立てをロシア裁判所に提訴するようである。あわせて今後の釣り及び漁の解禁を求めて嘆願書を提出する予定であるという。資源が守られ、自然が守られ、かつ皆が公平に合法的に釣りが楽しめる、コッピ川であることを望んで今後の推移を見守りたい。現時点では今後の川の解禁は未定である。今回、日程的に不完全なツアーになってしまったが、その事にばかりとらわれると大切な出会いがスポイルされてしまう。あの感動的な出会いを心に、毎晩布団に入るたびグラマラスな銀鱗を思い出してにやけている進歩のない私は、再びロシアの大自然の中、釣りをしている情景を思い浮かべている。(写真は70センチ級 オスのシーマ)
田中 秀人