2008年03月19日

三面川 解禁日 激流の中のピンスポット

三面川景色_t.jpg
残雪の残る三面川 2008年の解禁を迎えた。
久しぶりに雪の多い年で、上流域はカンジキが欲しいくらいだ。

前日夕方に村上入りした僕は、今夜は一人の前夜祭。
明日は東京のお客さんと東北の仲間、村上の仲間が集まる。
1年ぶりの三面と友人との再会に高揚感を押さえられない。
眠れないのは解っているけど早めに床に入る。

解禁日の朝は霜が降りていた。
フリースの手袋を選ぶ。
天気は良くなるはずだ。
朝一がだめでも、日が差す9時〜10時が狙い目か?
ゴールデンタイムにどこに入っているか勝負だ・・・。
色々考えながら準備を急ぐ。

朝一は混雑している下流域を避けて、上流の超A級ポイントを選ぶ。一昨日の雨で増水気味で笹にごり状態。
状況としてはバッチリだ。魚もかなり動いているに違いない。

上流のポイントに入ると、なんと両岸に 人 人 人 人 人 人
核心ポイントは銀座状態。
何とか間を探して入るがノーヒット。
回りもヒットした様子は無い。

さすがに日曜日の解禁日だ。
サクラマスの資格を取っている人が300人強。
おそらく250人以上は川に立っているのではないかと思われる大混雑で、上流から下流まで両岸びっしり人が入って、やる場所が無い。

ポイントをチェックしながら中流域の狙いのポイントまで移動。
狙いの9時過ぎだった。
橋げたにぶつかり対岸のテトラにぶつかり、かけあがりを形成するそのポイントの中ほどには流木が沈んでいる。

昨年は師匠の則さんもこの流木の後ろで1本かけている。

核心のピンポイントを下流に見て、その瀬の頭から流していく。
先行者が一人いるが、一声かけてポイントに入る。

核心の流木のあたりまで来た。
濁りが有る、先行者があるので、CDレックス8.5のカラーはチャートリュースを選ぶ。
キャスト、着水。1mの深さをキープしてミノーを送り込む。
ストラクチャーの手前に来たところで、ロッドを下流側に倒して10センチだけさらに沈めてやる。

「シュッツ シュツッ シュッツ」
ロッドティップが風を切った瞬間、「ギラッツ!ズンズンズン!」閃光とローリングの振動が手に伝わってくる。
「アッツ!」約三秒後にフッと軽くなり、虚しくCDレックスだけが戻ってきた。「ショートバイトか・・・。」

九頭竜でもショートバイトで終わっているので、バラシはしょうがないと思いつつも、「あまりショートバイトが続くといやだな・・。」弱気の虫を必死で抑える。

「くそー!!!」
叫ぶ僕の元に、東京のRさんが駆け寄ってきた。
目が輝いている。「い 居ますね!」
「水が多いから、次の魚が入ってきますよ。付いてるのは1本じゃないかもしれないし。もう少しやってみましょう!」
気を取り直して、粘ってみるが後は音なし。
30分ほどやって次のポイントを目指すために車に乗り込んだ。
とそのとき・・・。
Rさんが「アッツ!何かネットに入ってますよ!釣れたんじゃないですか?」
僕のバラシを見ていた先行者が、僕らが去ったポイントに入り僕がばらしたそのピンポイント、まさにその場所でネットの中の銀鱗を呆然と見つめている!
「やられた・・・。」ばらしたその後で、その場所ですぐ釣られると本当にショックがでかい。

気を取り直して移動するが、どうしても悔しさが拭い去れない。

ふと ネコヤナギに目をやる。
必死に冬を耐えて、今 日差しに誘われて目を覚ましたところだ。愛らしく、なぜかほっとする。
同じく、厳しい冬を乗り越えてきた同士だからだろうか。
ねこやなぎ_t.jpg
ネコヤナギであらぶる心が少し落ち着いた。

ポイントを探りながら、村上の春の息吹が目に入ってきた。
軒下には、1mは有ろうかと言う巨大なオスの鮭が吊るしてある。
村上名物「鮭びたし」になる。
塩をしてカチカチに干してある鮭の皮と骨を引き、よく切れる包丁でうすくスライスして、日本酒をかけて頂く。
酒は村上の銘酒「〆張鶴」で決まりだ。
т_t.jpg
春の日差しが柔らかく軒下を包む。
この空気感と村上の伝統が古くからの風情を引き継いでいる。

さて気を取り直して、情報収集。
下流まで行ってみると、ポツポツ釣れている様だ。
いつも一番釣れている瀬波大橋より下流やJRの下流はノーヒットらしい。水が多いからサクラマスは移動したのだろう。

JRから下渡大橋の間で5本、その上流で1本、水明橋下流で2本上流で1本。上流域は岩沢で1本。10本確認。
これだけ中流域で上がれば、普通、瀬波大橋では10本位上がってもいいくらい釣れるのは下が多い。
ベイトキャスターたち.jpg
(集うベイトキャスター 同士たち)

情報を集め、午後には村上の友人 佐久間くんが合流。
僕の情報と合わせてポイントと作戦を組み立てる。

狙いは雪代が少し入る、午後2時から3時にどこにいるかだ!
250人の釣り人にいじめられ、あっという間にサクラはすれて、ストラクチャーに入るか対岸に非難するか、移動するか・・。

見慣れていないカラーのチャートリュースは最高だろう。
いじめられた後だからサイズを7センチのCDレックスにしよう。
チューニングは微妙にソフトな1gプラスのウエイトチューン。

佐久間くんの勧めで、銀座ポイントの対岸を目指す。
人が多いほうは入りやすい上に瀬の開きが広がる好ポイントだ。
さらに対岸は道が悪く、さらに残雪で車が入っていない。
ガンガン瀬なのだが、支流がぶつかり流木がからみ、合流には
約15mの縦のスリットが入っている。
「対岸で追われて、このスリットに入っているに違いない!」
佐久間君は言い切る。

ポイントに向かう途中。4駆のランクルショートがスタックしてデフロックでも4輪からまわり。だめか・・・。
あきらめかけたその瞬間。奇跡的に佐久間君の知り合いがジムニーで登場!助け舟に引きずり上げてもらって無事生還。

「こりゃついている。釣れるよ!」俄然元気になってきた。
そのジムニーのジモティーもそのスリットを目指していた。
ますます期待は高まる。

ただし、ポイントは超A難度のピンスポット。
ガンガン瀬の中に縦にスリット。
支流がぶつかりウエーディング出来るのはスリットの上からほんの2mくらいの真横まで。10m以上はそれ以上真横には立てない。
ぎりぎりまでウエーディングしても足が砂で洗われて危険だし、ガンガン瀬でスリットの終わりのすぐ脇には流木の塊。
無理をすると命にかかわる。

スリットの上はクロスで誘い、ぎりぎりまで下ったら後はダウンクロス、スリットのケツは完全にダウンになる。

一通り探るが、当たりはない。
今度はスリットの上流にたって完全にダウンで送り込んでゆく。
リトリーブすると60cmくらいの深さを泳いでくる。
止めてやると1mくらいの水深でステイする。
スリットの最深部は2m弱。
ボトムを取る必要はないが、ボトムに張り付いたサクラマスを誘い出すには後10センチから20センチ沈めて誘いたい。

スリットを縦に探る。水深60cm、止めて1m、ロッドワークで10センチ単位で出し入れしながら誘っていると、フッツとガンガン瀬の抵抗が一瞬ひるんだ。
「前当たりだ!」 「ゴクリッツ・・・。」つばを飲む。

すかさずサムバーをクリックしてクラッチを切り 1m送り込む。
1m送り込むとこの流速とミノーのチューニングなら15センチ沈む。スリット最後の駆け上がりに付いている!
水深1.5m。ミノーを1.2m水深に送り込みバシッツ バシッツ!2回誘いをかける。
ボトムをとるのではなく、張り付いているサクラの攻撃射程の30cmから40センチまで入れて、誘って喰わせる!
「ズドッッ!モソモソッツ!」重く鈍くCDレックスが押さえ込まれた。狙い通りパズルがもう一つはまった!!

これからが大変。
かけた場所がすごい。
ガンガン瀬の中のスリット。しかもいっさい下れない。
スリットの下には流木群、通称 流木の巣が待っている。
「モゾモゾッツ・・・。」「バッシッツ!」
一発合わせを入れると、そこに張り付いたサクラが猛烈にもがきながらスリットを出てガンガン瀬の中に逃げ込み流木の巣を目指そうとしている。「ズズッツ ズズッツ・・・。」
2キロテンションのドラッグが滑ってゆく。
「これ以上ドラッグが出たら終わりだ!一か八か勝負だ!」
ドラッグをフルロックしてさらにスプールを親指で押さえてフルロックする。
ロッドはボウをして水面につくすれすれまで寝かしてサクラを止める。「ゴンゴンゴン ゴンゴンゴン!」10秒ほど抵抗してなんとか一発目の走りを強引に止めた。サクラは再びスリットのそこに戻り張り付いた。
一発目の危機を乗り越えてここで追いあわせを入れる。
「ガツッツ!ガッツツ!」2発合わせを入れた。
おそらく口の先の固いところだろう。最高にばれやすい状況だが何とか魚を乗せることが出来た。

ここから壮絶なファイトが始まった。
上流にいるRさんと、佐久間君はまだ僕のヒットにきずいていない。下流を向いてサクラと対峙するこのタイミングで後ろを振り返ってヒットを伝える余裕は無い。

寝かせていたロッドをいよいよ立てて、ボトムからサクラマスを引きずり出す!
モゾモゾ ズズ・・・。張り付いているターゲットをスリットから強引に引きずり出すと、今度はガンガン瀬に躍り出てものすごいスピードでダッシュを見せる。
「最高のファイトだ!!」ぼくも完全に戦闘モードに入って、サイドプレッシャーとボウを繰り返し、サクラにプレッシャーをかける。ものすごい引きだ!上流に走り支流にも突っ込んでゆく。
ドラッグは締めてある。あまり巻き過ぎると手元で大暴れしてバラしてしまう。走るだけ走らせプレッシャーをかけ弱ってからランディングにはいらないとこの超A難度のシチューエーションは攻略できない。

360度魚が走り回っている。
スリットと流木だけ注意する。

5分ほど戦っただろうか・・。
ようやく本流側のガンガン瀬の中で動きが鈍くなり、空気を吸わせると抵抗も弱ってきた。
ここでようやく上流のRさんに声をかける。
「ヒット!!」ずいぶん前のヒットだけど、大声でファイトを仲間に伝える。
Rさんが走ってきた。

ネットに手をかけ、ランディングを試みるが瀬の中に立ち足の砂がすくわれ不安定な上にネットをかざすとサクラが瀬の中を下がってゆく。Rさんにランディングのアシストをお願いして一発でランディング!「で でかいですね!!」でかいだけじゃなく、かけた場所も大変だし、本当に強い魚でむちゃくちゃ引いた。

狙いに狙い、絞りに絞り、チョイスもストロークも全てを絞り込みヒットさせた納得の1本。
かけた場所もファイトも物凄いものだった。
ベイトだから出来たアクションと送り込み。
ベイトだから止められた猛烈な走り。

ランディングで最後のパズルがきっちりとはまり、春の使者、
ガンガン瀬の妖精が僕の手に収まった。
サクラマス_t.jpg
恐ろしく、霊気を感じるほどの、
厳しいきつい目つきのサクラマス 60cm 2.5`。
これほどきつい表情のメスは初めてだ。
きつい性格のマスだからこんなに引いたのだろうか?
きつい性格のマスだから、早春にもかかわらず、このガンガン瀬に
入ったのだろうか?

サクラマスと言っても本当に一匹一匹違う表情を見せてくれる。
この瞬間に全てが報われ、全てのしがらみから開放される。

作戦も、状況判断もそして 壮絶なファイトも全てが完璧で納得の1本であった。

その夜は、仲間が集い ラムにワインに村上牛で祝杯が上がった。
つきないサクラマスの話。
友の笑い声、芳醇に広がる南仏のヴァン ド ペイ。
僕のキャンパーの横に大型の東屋を張って、6人で至福の時間を共有した。
夜は尽きることなく、床に就いたのは深夜だった。

翌日は相変わらずの人だらけ。「三面が近年に無くつれたぞ!」
噂が広がり、皆やる気満々だ。

といっても250人で確認したのが10本ほど。その他つれていたとしても多くて15本だろう。
黙っていてもこの混雑じゃ誰かに見られて、すぐ川中に情報が広がる。こっそり釣ろうなんて解禁日には不可能だ。
釣れたといっても この妖精にふれることが出来たのは20人に一人くらいのプラチナ ラッキーであり、相変わらず夢の手の届かない「孤高の宝物。サクラマス」なのである。

2日目に確認したのは、2本だけ。100人に一人の確率。

これだけの低確率だが、絞込み、引き出しを駆使し、とにかく引き倒せば通常の2倍以上の確立まではゲットの確立を上げることは出来る。
それでも、なかなか触れることの出来ない「春の妖精」
いつまでも僕の心を惑わせてくれる。
会いたくてたまらない・・・・。
三面サクラマス_t.jpg
美しき銀鱗。野生が産み出した完璧な芸術作品である。

ロッド:ベイトキャスター クイックトゥイッチン 71H
ライン:14lb ナイロン 
リーダー:30lb
ルアー:CDレックス 7cm 
    チャートリュース(1g+チューン)
ベイトリール:シマノ カルカッタDC201

ヴィヴァ!チャートリューサーズ!

素晴らしい渓相を見せる三面川。
ロケーションも最高だ。
三面川景色2_t.jpg
 

posted by saurus junior at 10:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 釣行記
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